大腿骨頭すべり症とは
成長が盛んな時期にホルモンバランスの乱れで、骨端線で軟骨骨折をおこし
骨端が頚部に対して後下方に転位してしまう疾患。
一言でいうと「大腿骨頭の骨端核が後下方に滑ってしまう疾患」
病態
本症は思春期の男児に多く、二次性徴が遅れていることが多い。
また両側性、肥満児、女性では初経後には発症しないことから
成因として成長ホルモンや性ホルモンが関連していると考えられている。
成長ホルモンは骨端線成長軟骨において肥大細胞層の増殖に関与し、性ホルモン同部位の骨化を促進するとされている。
思春期にこれらのホルモンバランスが崩れることで、骨化が遅延し、肥大細胞層で軟骨骨折が生じた結果すべり症がおきると考えられている。
病型
急性 10%
慢性 80〜90%、acute on chronicもある
症状
股関節や膝、下肢痛を訴えることがある。
特徴的な所見
患肢は著しく外旋している。
これは骨頭が後下方に転位することによって、外旋したほうが、骨頭と臼蓋の適合性が良くなるからと思います(私見)。
また同じ理由から屈曲よりは伸展のほうがやりやすいでしょう。
可動域の制限としては、上記の逆で、内旋、屈曲が挙げられます。
特徴的な身体所見としてDrehmann(ドレーマン徴候)が挙げられますが、
「仰臥位で股関節を屈曲していくと患肢開排(外転、外旋)します」
レントゲン所見
これは軽度の大腿骨頭すべり症の症例(左が患側)である。
レントゲン所見だけでははっきり異常を指摘するのは難しいだろう。
2つ特徴的な所見があるので、順に見ていこう。
Trethhowan徴候
(https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1985)
正常では頚部外側の延長線(Klein line)より骨頭の外側縁は外側にはみ出している。
患側でははみ出さない。
これをトレソーワン徴候という。
Capener徴候
正常な側面像では、骨幹端後方は寛骨臼内に存在するが、
患肢側では臼蓋からはみ出している。
このことを念頭に、最初の軽度の症例をみると、すべり症を疑うことができるのではないだろうか
治療
保存では再転位の可能性が高く、手術が第一選択である。
術式は転位の程度に応じて決まる
後方傾斜角が
〜30° …in situ pinning
30 〜60°…転子下骨切り術
60°〜 …大腿骨回転骨切り術
ただし30°以上でも、急性期に対しては正常な位置に戻して、内固定する場合もある。
慢性期では徒手整復は禁忌。骨頭壊死を起こすから。
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